監督のつぶやき

2018年

 

最新号      2018年1月更新

 

「問いを深める」   2018年1月 

 

 

 

 

 

 

 

 

「問いを深める」2018.1


2018年の年明けは『やさしくなあに〜奈緒ちゃんと家族の35年〜』の上映で始まった。

35年間撮影に通った横浜市泉区、奈緒ちゃん一家の地元での自主上映と、東京・新宿K’sシネマでのアンコール上映だ。

 

横浜市泉区での上映は、500人近いお客さんが集まってくれた。

主人公の一人、奈緒ちゃんのお母さんは私の姉だが、昔からお祭り好きで今回の上映でも、集客、当日の運営と、これ以上無いような頑張りようだった。その奈緒ちゃんのお母さんを中心に、奈緒ちゃんの通う知的障がい者施設「ぴぐれっと」のお母さんパワーが炸裂、とても楽しい一日になった。

これから全国各地で拡めようと思っている自主上映の、最先のよいスタートが切れたと思う。

新宿K’sシネマでは昨年11月に一度封切り上映を行ったのだが、好評につきもう一度、ということでのアンコール上映だった。

今回は、前回程集客が伸びず苦戦、けれども連日、足を運んでくれるお客さんがいた・・・ありがたい。

今年も、一喜一憂の日々に明け暮れるのだろう。

 

お客さんが来る来ないだけが、映画を上映することの意味ではないかもしれない、とこの頃思う。

自分に引きつけて言えば、何より映画を創った本人が、自作を観ることからどんなメッセージを受け止めることが出来るかが、大切なのではないだろうか・・・

 

映画『やさしくなあに』は、我ながらとても奥行きのある映画だと思う。

観れば観る程、色々なことを考えさせてくれる。映画を観た人の感想もじつに多様だ。共通しているのは、多くの人が、自分のこと、自分の家族のことを書いていることかな?まず奈緒ちゃん一家にエールを送り、実は、私は、私の家族は・・・という具合に。

 

映画を観るということは、独りになって自分自身のことを振り返るということにつながると思う。

映画は「窓」というよりも「鏡」なのだから。

スクリーンに写る自分自身を、しばし見つめる行為でもあるのだ。知識を得て答えを受け止めるということよりも、問いに気づき、答えのない問いを深めるという時間なのだ。暗がりの中で一時間、二時間、時には三時間、心を宙づりにして旅をするのだ。

答えなどあってたまるか・・・

ひたすら問いを深めることこそが、映画を創ること、観ることなのだ。

 

創り手は悩みに悩んだあげくに長い旅を終え、ひとまず「完成」という波止場にたどり着くのだが、旅は決して終わったわけではなく、果てしなく続いているということだ。

映画は人生そのものだと思う。

 

2月は全国各地のミニシアターでの上映が始まる。

210日(土)には恒例の「ヒューマンドキュメンタリー映画館 日比谷」で、50年前に製作された『奈緒ちゃん』のカメラマン・瀬川順一さん撮影のドキュメンタリー『夜明け前の子どもたち』と『やさしくなあに』が二本立て上映される。

その日の夜、23時からのNHK ETV特集では、いせフィルム製作の日本のアールブリュットを描いたドキュメンタリー『人知れず 表現し続ける人たちⅡ』

(伊勢朋矢演出)が放送される。

 

創り続ける。上映を続ける。

・・・そして問いを深める。

 

今年もよろしく。